全国の地銀の不動産融資が減速傾向にあるようです。
今年この不動産融資減速の引き金となった「かぼちゃの馬車問題」について振り返ります。
地銀からの不動産融資が難しくなっている
「サラリーマン大家」を多く輩出してきた不動産投資ブームが収束傾向にあります。
金融庁の監視の目も厳しくなり、全国の金融機関ではアパートやマンション投資用の融資を抑える動きが広がっています。
日経新聞(11月16日付け)の調査に対し、
全国100の地銀が不動産融資に対し「積極的に行う」の項目にNOの方向性を示しています。
大手も含め銀行全体でもアパート融資の低迷する中、融資総額の6割以上を占める地銀が減速することで、
さらなる低基調が見込まれています。
「かぼちゃの馬車」どこに問題があったのか?
「事業として見ていたか?」
スマートデイズ社の(表側の)ビジネスモデルは、
「地方の就活生が東京で就職活動をするためのシェアハウスを安価に提供する。
シェアハウスを安価に提供するため、就職が決まった際に企業から紹介手数料を受領する」というものだったと思います。
問題になる前は、HPも綺麗に作られていて、理念含め共感した覚えがあります。
確かに金融機関の行き過ぎた行為や、アパマン物件の高騰で売上に苦慮した不動産業者の強引な営業、
スマートデイズ社の無理のあるビジネスモデルといったさまざまな要素はあるにせよ、
被害者になったとされる投資家は、事業としての検討を行っていたのでしょうか?
不動産投資は立派な「事業」
事業的規模とされる「5棟10室」を超えないにしても、
「仕入れ価格」つまり土地の価格や建築費は妥当なのか、「需給バランス」継続的に入居者は確保できるか供給過多にならないか、
「維持管理」ランニングコスト、修繕費はどのくらいかかるか、「金融」借入比率や金利は妥当かなど、
検討しなくてはならないことは多岐にわたります。
もちろん、取得後も維持管理上やならければならない業務は多いのですが、
その業務のほとんどをアウトソースできることが不動産投資は不労所得と言われる所以です。
ただ、ホテルや商業施設などの不動産は、「オペレーショナルアセット」と言われ、単純に部屋の賃借だけの収益ではなく、
「いかに運営をしていくか」が収益を生むかどうかのポイントになります。
シェアハウスもただの賃借ではなく、どのようなコミュニティを創出していくかなどオペレーションが重要とされるため、
通常の不動産投資よりも難易度が高いと考えて良いでしょう。
事業としての「サブリース」にも、借地借家法が適用される
細かいことは法律家に任せるとして、サブリースにも「借地借家法」が適用されることが知られています。
ということは、借家人(スマートデイズ社)には、賃料の減額請求権が認められていた可能性は高いと考えられます。
細かい契約内容はわかりませんが、
少子高齢化が進み空き家がどんどん増えている中で、30年間にわたり賃料が固定で保証されるというのは、
少し冷静になってみると事業モデルに対する疑問や懸念が沸いてくるはずです。
もし仮に保証が確約されていたとしても、やはり家賃保証をする原資の確保のため、
建築コストや修繕コストに相応の上乗せがされていることは想像に難くありません。
また、つい昨日(平成30年12月27日)にも一部上場企業の株式会社TATERUによる不適切な営業行為についての報道がありました。
何度も言いますが、不動産投資は「事業」。
どんなに甘い言葉で誘わても、ご自身のリスク許容度をしっかりと理解して進めるべきか否かを判断すべきでしょう。
事業用不動産にも影響するのか?
不動産業界に身を置く身としては、今年の締めくくりにこのような報道がされるのは寂しい限りですが、
これらの事象は、不動産投資ブームがやや過熱しすぎたことにより、
投資家の裾野が広がりすぎたことにも原因があると思っています。
アパマン投資市況は金融機関の融資姿勢によりほぼ決定づけられますが、
プロ対プロで行われる事業用不動産においては、エクイティ投資家側の状況により左右されます。
よって、いまだ活況を呈しており、不動産価格は高騰している状況と言えます。
もともと不動産投資は、伝統的な投資手法です。
来年は不動産業界が悪者にならないような年になることを節に願っています。
良いお年をお迎えください。