働きやすい職場環境の実現に向けて、各企業でさまざまな取り組みが行われてきました。
2019年4月には、働き方改革法が正式に適用となり、日本の働き方是正は今も積極的に進められています。
数年の間に、好事例もよく目にするようになりました。
しかし、「改革が進んでいる」「働きやすくなった」と実感する労働者の割合は、
まだ理想には行き着いていないようです。
社員は働きやすさに満足しているだろうか?
日本能率協会の2018年9月時期のアンケート調査によると、
「職場で働き方改革は進んでいますか」という質問に対し、
「とても実感している」が4.4%、「やや実感している」が26.8%という結果が出ていました。
前年比は10%以上、数値の伸びがあったのですが、
裏を返せば、70%ほどの人が実感していないことになります。
年代が上になるほど実感率が低いことも気になるところです。貴社の社員の皆様はいかがでしょうか。
日本能率協会:第9回「ビジネスパーソン 1000人調査」【働き方改革と副業編】
https://jma-news.com/wp-content/uploads/2019/02/54477281010ca857ad4a99a77130c1b5.pdf
見直しポイント①実際に利用しやすい制度なのか
残業を減らすルールを決め、〇〇休暇と銘打って休む動機を増やし、
短時間勤務で働く時間の柔軟性を高めるなど、新たな制度の導入も活発に行われています。
しかし、単順に休暇が取れたり、働く時間を短くできたりすることが、
従業員にとっての働きやすさに直結するわけではありません。
周りへの遠慮で休暇が取りにくい、
業務時間内に終わらないため時短制度は使えないなどの声も散見されます。
結局、誰かが不満を抱く、もしくは、誰かに負担のしわ寄せがいく制度からは働きやすさは生まれないでしょう。
組織が抱える仕事の絶対量のコントロールや、各社員への割り振りそのものを見直す必要がありそうです。
見直しポイント②問題は解消されているか
新制度を制定するのであれば、実際に利用されたときに、
新たに生じてきそうな問題にまで視野を広げておくことも大切かもしれません。
たとえば、デジタルの進化がオフィスのデスク以外での仕事を可能にし、
リモートワーク導入や社内に集中スペースを設置する企業が増えています。
必然的に、メンバー同士の物理的分散が生まれるため、チャットツールの活用も浸透しています。
チャットであれば、それぞれが簡素に自分の業務ペースで送ることができます。
ただ、受けた側はメセージが届くごとに目の前の作業を中断されることが考えられるでしょう。
それぞれが自分の都合(時間)に合わせて働けるようになると、
業務時間外でのやり取りが増えることも想定されます。
急ぎ業務か、そうでないかの区別、業務時間外のルールなどもあらかじめ統一して決めておくのが賢明でしょう。
見直しポイント③現状を削る視点(施策)を飛ばしていないか
「新しい制度を制定すれば働きやすくなる」と、加えることばかりの働き方改革は返って危険かもしれません。
まずは、現状の制度、業務・業務フローを洗い出し、無駄を省くことからのスタートをおすすめします。
省くべきムダは、その先も発生し続けます。
常に生まれる無駄に対処し続けるサイクルを見失わないようにしたいものです。
政府の働きかけもあり、各制度が企業のあり方を測る要素として求職者も注目しています。
企業内の制度見直しの動きは高まっていますが、
アピールのための「見栄え施策」になってしまってはそもそもの目的からずれます。
社内の満足度は上がらないのです。
それどころか、
不満の増大やエンゲージメントの低下すら招いてしまう恐れがあります。
制度の追加だけでなく、今、社内に起こっている課題にしっかり目を向けた方が、
働き方改革の本質につながるのではないでしょうか。