健康経営の広がりとその背景

「健康経営」の重要性の認識度も高まりを見せ、働き方改革に
向けた対策とともに積極的に取り組みを進める企業が増えています。
今回は健康経営の概要と国内企業に広がった背景を解説します。

健康経営とは

以前から社員の健康を重視してきた企業はありますが、
それは企業運営や業績とは区別して捉えられていました。
健康経営では、企業が従業員の健康保持・増進を経営課題と捉え、
ヒト、モノ、金、情報などと同じように、
社員の健康も経営に不可欠な資源として考えます。

社員の健康向上や疾患予防に対する投資や取り組みを
戦略的かつ積極的に実施していく経営手法です。

健康経営は、企業の生産アップや社会的価値の向上にも
寄与すると考えられています。

健康経営の広がり

政府も、健康経営を行う企業の後押しをしています。
経済産業省は、平成28年度に「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。

この認定制度は、大企業と中小企業で部門が分かれています。
制度基準は初回制定以降、情勢に合わせて随時改定されているものの、
中小規模法人認定数の推移を見てもかなり注目度が
高まっていることが伺えます。

平成29年度(初回)  318社
平成30年度      775社
令和元年度      2,501社
令和2年度      4,723社

参考:経済産業省:健康経営の推進
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html

また、企業の健康経営に関する取り組みに対しては

さまざまな助成金制度があります。
最近では、新型コロナウイルス感染症に係る時間外労働等改善助成金として、
テレワークを導入した企業に対する助成金制度も制定されたようです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09904.html

・時間外労働等改善助成金
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html
・業務改善助成金https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html
・受動喫煙防止対策助成金
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html

取り組み内容に応じて活用されてみてはいかがでしょうか。

健康経営が注目される時代背景

では、近年になって、あえて「健康経営」として
取り沙汰されるようになったのか、その背景を見ていきましょう。

日本では少子高齢化が進み、労働人口が減少により、
企業の人材確保が難しくなっています。
懸念されるのは、長時間労働や組織の平均年齢の上昇です。
年齢が上になるほど健康リスクが必然的に上がる中、
企業が生産性を維持・向上させる必要性は高まっています。

従来、大人の健康は個々の問題と捉えられてきましたが、
デジタルが人々の生活や仕事の中に浸透する昨今、
ストレスや運動不足など健康の阻害要因が増えています。

どの企業にとっても、他社ごとでは済まされない
リスク要因ではないでしょうか。
実際に、過労死や精神疾患の発生事例も少なくないことから、
組織レベルでの積極的な啓蒙や働きかけが求められているのです。

企業の業績向上だけでなく存続させていく上でも、
健康経営の意義は大きいと考えます。
優秀な人材を失うその理由が、社員の健康のこともあり得るのです。
人手不足の昨今、代えの効かない人材や、その人材が培った技術やノウハウを
失えば、単なる人材の退職では済まない波紋が広がるでしょう。

企業にとって大きな痛手になるはずです。
健康経営は企業にとって喫緊の課題と言えるかもしれません。