従業員が増えるほど、一人ひとりの社員の働きや動向を把握することが難しくなります。
しかし、自身への評価を社員はいつも気にしているものです。
人材の流動が活発になっている昨今、個々に正当な評価を与えなければ
人材は離れていってしまうでしょう。
今回は、現代企業が抱える人事評価の課題に対し、
一定の成果が認識され始めているピアボーナス制度についてお伝えします。
ピアボーナスは社員が日常的に主導する人事制度
ピアボーナス制度では、社員同士で感謝や称賛したい相手に対してポイントを送ります。
受け取ったポイントは報酬に換算され、給与の一部として会社が支給するものです。
人事や上司が定期に行う人事評価によって、給与や昇進が決まる企業は多いと思います。
ピアボーナスは、社員主導で日常的に行う人事評価ともいえるでしょう。
ピアボーナスで評価頻度を高めることの重要性
ピアボーナス制度は、日常的な業務に対し、社員同士で感謝や称賛を送り合うものです。
もちろん、大々的なプロジェクトなどの成果に対する評価もありますが、
通常の人事評価では表に出てこないような「小さな協力や支援」を評価するものです。
いつもは、業務の流れの中で、軽いお礼で済ませてしまうようなことも、
制度の存在によって顕在化することができます。
自分の仕事が評価されている、貢献できている、必要とされている。
これらを実感するには、内容の大小に関わらず、頻度が大事ではないでしょうか。
ピアボーナスには、年に1、2回の人事評価、定期的に行われる上司との面談には敵わない、
圧倒的な頻度の高さがあります。
毎日が評価対象日。
評価する人も社内の全員です。
しかも、評価される行動との時間差もほとんどありません。
このことが、従業員のモチベーションを高めることにもつながっていきます。
ピアボーナスの流れが現場の詳細を可視化
〇〇さん、資料作成を手伝ってくれたおかげで納期に間に合いました!
商談にいったら、先方が〇〇さんの対応を褒めていたよ!おかげでスムーズに進んだ!
〇〇さんからこの前いただいたアドバイスのおかげでうまくいきました。
周りが気づく気づかないに関わらず、社員は、意味のある頑張りを日々、積み重ねているものです。
ですが、人事評価や面談で表に出るのは、ほとんどが「成果」にまつわる内容ではないでしょうか。
見逃せば、そのあとにある成果を出した者だけが評価されることになるかもしれません。
従業員にとっては、埋もれがちな称賛を、報酬(ポイント)を用いて、
やり取りできるのがピアボーナスの魅力でしょう。
人事も、従業員のやり取りの履歴を見ることで、組織内の部署間の関係性や人間関係、
各従業員の得意・不得意も分析しやすくなります。
適材適所の配置や抜擢などに役立てることができるのです。
ピアボーナスの懸念点・注意点
ピアボーナス制度には、気をつけておきたいこともあります。
ピアボーナスは、利益分配で決定する通常のボーナスとは特質が異なります。
常に加点評価で蓄積されていくため、増収時はいいですが、減収時でも抑制が難しいのです。
ポイントの上限を定めておくなどの対策が必要となるでしょう。
一度始めると辞めにくいという点も認識した上での判断をおすすめします。
また、全員が参加に積極的とは限らず、活用する人、しない人に差が出る可能性があります。
常に全員の目に留まりやすい仕組みをつくり、
適切なシーンで思いついてもらう流れを浸透させることが課題です。
ピアボーナスによる評価を強要する社員が現れないとも限りません。
ポイント自体がモチベーションになってしまうことへの対策が求められるでしょう。
人材の流動が激しい昨今、短期間で一人ひとりの社員について
、理解を深めることが難しくなっています。
現場の社員の目を借りて、共に働く社員たちの日頃の評価までを任せてみることで、
社員の「正当に評価されたい」という欲求を日常的に埋めることができます。
結果的に、総合的な人事評価や配置にも活かせるのです。
適切な人事が行われれば、従業員も自身が正当に評価されていることを感じられるでしょう。
能力を活かして活躍できる機会が増えるほど、離職を考える可能性も低くなるものではないでしょうか。