- 2020年6月2日
-
BCP(事業継続計画)策定について、はじめは社内にノウハウがないため、
実際に運用してみると見えてくる不備もあります。
策定サイクルを回しながら改善を繰り返しましょう。
今回は、BCPの策定・改善にあたって
押さえておきたいポイントや注意点を解説します。
計画対象を主要事業に絞り込む
BCP策定の対象は、自社でもっとも重要な事業・業務に絞るのが賢明です。
まずは全社事業・業務を俯瞰してインパクトの強いものを選択しましょう。
ひとつの事業、業務をとっても対処・対策すべきことは
非常に多岐にわたります。
あれもこれもと対象を広げるほど策定段階でさえ行き届かなくなるでしょう。
実際に緊急事態に直面した際の復旧の効率も悪くなり、
結局はどれも機能させられなくなる可能性が高まります。
回復までの目標時間を明確に設定
緊急事態の発生から復旧までは短期であるほど良いのですが、
「現実的」で「明確」な復旧までの目標時間を設定することが大切です。
その長さは、緊急時に確保できリソースの種類や規模によっても異なります。
長期になるほどリソース条件は悪くなり、長期化を助長するでしょう。
緊急事態においても時間的指針は必要です。
取引先とも意見を交わして協力策定
契約相手企業のBCPを確かめたいと考える企業もあります。
今後はますます増えていくでしょう。受発注などどちらの立場でも
取引規模が大きいほど、双方で「事前に」万が一の際の協力体制について
意見を交わしておくことをおすすめします。
お互いの信頼関係構築の意味でも有効なプロセスです。
中長期的なリソース代替案の確保
緊急事態発生時には、BCP対象業務に必要なリソースが使えなくなることも
想定しなければなりません。
たとえば、事業所自体が被災したり、システムが停止したりすれば、
業務を進めるためのそれらに代わるリソースが必要です。
新型コロナ感染症の発生時には、従業員の通勤自体が制限され、
オフィスでの仕事が難しい状況となりました。
テレワークへの移行を急がれた企業も多かったはずです。
あらゆる「不足」の可能性に対して備えておく必要があります。
場合によっては片手間では用意できない要素も含まれますが、
そういったものについて中長期で整備していく
心構えで計画することが大切です。
「自社」のBCP内容を全社員で共有
BCPは策定するだけでは有効な計画とは言えません。
全社員がBCPの存在を認識し、中身をよく理解し、
緊急事態の発生時にはBCPに沿ってそれぞれが役目を遂行する心構えと
「自社業務に対する」適切な行動が求められます。
BCPの内容は全社員が把握できるよう文書化しておきましょう。
個々の企業でBCPの特質は異なるものですから事前の教育や訓練が必須です。
実際のところ、どのような緊急事態に見舞われるかは未知数です。
しかし、BCPの有無は復旧や回復の速度に雲泥の差を生みます。
「自社にとって」より安心度の高いBCPを策定しておきましょう。
- 2020年5月30日
-
「健康経営」の重要性の認識度も高まりを見せ、働き方改革に
向けた対策とともに積極的に取り組みを進める企業が増えています。
今回は健康経営の概要と国内企業に広がった背景を解説します。
健康経営とは
以前から社員の健康を重視してきた企業はありますが、
それは企業運営や業績とは区別して捉えられていました。
健康経営では、企業が従業員の健康保持・増進を経営課題と捉え、
ヒト、モノ、金、情報などと同じように、
社員の健康も経営に不可欠な資源として考えます。
社員の健康向上や疾患予防に対する投資や取り組みを
戦略的かつ積極的に実施していく経営手法です。
健康経営は、企業の生産アップや社会的価値の向上にも
寄与すると考えられています。
健康経営の広がり
政府も、健康経営を行う企業の後押しをしています。
経済産業省は、平成28年度に「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。
この認定制度は、大企業と中小企業で部門が分かれています。
制度基準は初回制定以降、情勢に合わせて随時改定されているものの、
中小規模法人認定数の推移を見てもかなり注目度が
高まっていることが伺えます。
平成29年度(初回) 318社
平成30年度 775社
令和元年度 2,501社
令和2年度 4,723社
参考:経済産業省:健康経営の推進
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html
また、企業の健康経営に関する取り組みに対しては
さまざまな助成金制度があります。
最近では、新型コロナウイルス感染症に係る時間外労働等改善助成金として、
テレワークを導入した企業に対する助成金制度も制定されたようです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09904.html
・時間外労働等改善助成金
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html
・業務改善助成金https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html
・受動喫煙防止対策助成金
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html
取り組み内容に応じて活用されてみてはいかがでしょうか。
健康経営が注目される時代背景
では、近年になって、あえて「健康経営」として
取り沙汰されるようになったのか、その背景を見ていきましょう。
日本では少子高齢化が進み、労働人口が減少により、
企業の人材確保が難しくなっています。
懸念されるのは、長時間労働や組織の平均年齢の上昇です。
年齢が上になるほど健康リスクが必然的に上がる中、
企業が生産性を維持・向上させる必要性は高まっています。
従来、大人の健康は個々の問題と捉えられてきましたが、
デジタルが人々の生活や仕事の中に浸透する昨今、
ストレスや運動不足など健康の阻害要因が増えています。
どの企業にとっても、他社ごとでは済まされない
リスク要因ではないでしょうか。
実際に、過労死や精神疾患の発生事例も少なくないことから、
組織レベルでの積極的な啓蒙や働きかけが求められているのです。
企業の業績向上だけでなく存続させていく上でも、
健康経営の意義は大きいと考えます。
優秀な人材を失うその理由が、社員の健康のこともあり得るのです。
人手不足の昨今、代えの効かない人材や、その人材が培った技術やノウハウを
失えば、単なる人材の退職では済まない波紋が広がるでしょう。
企業にとって大きな痛手になるはずです。
健康経営は企業にとって喫緊の課題と言えるかもしれません。
- 2020年5月28日
-
BCP(事業継続計画)の必要性を認識し、策定を検討されている経営者様や
担当者の方も多いかもしれません。
そこで今回は、実際にBCP(事業継続計画)を策定する手順を6つのステップに分けて解説します。
BCPの方針を決める
はじめに、自社が策定するBCPの目的を明確に掲げましょう。
たとえば、事業の早期復旧や取引先からの信頼性維持といったものです。
緊急事態においては、計画実行が難航することも多々ありますが、
この「方針」がどのような状況でも立ち返る原点となり進捗を促します。
BCPの体制を決める
次に、BCPを実行する際の体制を決めます。
BCP策定の主要メンバーは各部門から選定しましょう。
従業員の指示系統や連絡網なども必要です。
取引先をはじめ、影響の及ぶ関係各所との調整を図る体制も求められます。
具体的な体制を作っておくことは、発災時の適切なリーダーシップの
遂行にも役立つはずです。
BCP対象事業の選定
続いて自社のBCP対象の事業を選定します。
被害に遭い業務がストップすることで、自社の存続を
大きく左右する事業を選定しましょう。
その際に必要とされる重要業務を洗い出すことで、
BCP対策が求められる業務が明らかになります。
また、各種類の発災を想定し、各重要業務について
「復旧期間がX日間(X時間)を超えると企業存続が危うくなる
」という分析をして目標とする復旧時間を割り出しましょう。
BCP策定
ここから実際のBCP策定に入ります。
まず、自社のBCPを緊急事態のどの段階で発動するか
について明確な基準を定めます。
BCP対象事業が「特定の状況(影響の規模)になったとき」を
発動の目安にするのも一手です。
業務遂行に必要なリソースの代替案も検討しておきます。
通常業務とは明らかに異なるBCP発動後の「初期対応」は
しっかりとマニュアル化しておきましょう。
事前対策・社内共有/教育
自社のBCPは策定チームだけが把握していても意味がありません。
内容はすべて文書化し社内で共有、
全社員が内容を理解していることが大事です。
いつでも確認できるようにし、フローごとにわかりやすくまとめます。
従業員に関わりの深い内容については、
実習・研修・教育を実施しておきましょう。
BCPの見直し・再構築
BCPは、常に現状に沿うものでなければなりません。
古い情報を放置することは、BCPの無機能化を意味します。
以下のタイミングでは、とくにブラッシュアップが必要です。
更新頻度を決めておくとよいでしょう。
・緊急事態が収束した後(改善)
・自社のBCP対象事業(中核事業)の変更
・社内の組織編成やシステムの変更後
・取引先や顧客の変動
・国や業界の法律やガイドラインの改訂
・策定メンバーや従業員名簿は常に更新
中核事業だけを取り上げても、分析・チェック、対策する事柄は多岐にわたり、
思いの外膨大な時間と労力を要するでしょう。
頻繁に移り変わる内容も多いため、はじめから完璧を求めずに、
徐々にブラッシュアップしていくスタンスで始めるのが現実的です。
- 2020年5月26日
-
企業のリスク管理として緊急事態に対して、事前に対策・計画を立てる(=BCP)ことは当然と思われるかもしれません。しかし、浸透の浅い時期が続いてきたのが実情です。今回は、BCPを策定するデメリットから、多くの企業がなかなか策定に踏み切れない実情を探ります。
BCPの現状
新型コロナウィルス感染症の拡大を機に、リスク管理や対策への関心を高めた企業は増えています。それ以前にも震災や豪雨の被害が大きくなるごとに必要性は高まっていましたが、強固なBCPを確立した企業は少なかったようです。
帝国データバンクが2019年5月(新型コロナ感染症拡大前)に実施した調査によると「策定している」との回答は15%、「策定中」「検討中」の企業を合わせても5割に満たない結果でした。とくに中小企業にいたっては、従業員101~300人の企業で28.2%、従業員数が少なくなるほど策定割合がさらに低くなる傾向が見られました。いったいなぜ、進んでこなかったのでしょうか。
帝国データバンク:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p190604.pdf
BCPのメリット
BCPを策定することには以下のようなメリットが期待されます。
・緊急事態の対応業務に全社員が迅速に着手できる
・損害や被害があっても早期回復・復旧が見込める
・損害や被害を最小限に留めることができる
・社内の混乱や不安感を抑制できる
・取引先や顧客からの信頼を確保・維持できる
・事業継続や企業を存続できる可能性が高まる
BCPのデメリット
上記のメリットを見ればBCPが必要なことは明白です。しかしながら、メリットを享受するには、策定したBCPが「機能すれば」という条件が伴います。
あらゆる事態を想定して計画を立てるわけですが、緊急事態というのは常に想定内の問題に留まるとは限りません。新型コロナウィルス感染症の拡大でいえば、ほとんどの企業が「機能しなかった」にあてはまるでしょう。自社でどれだけの対策をとっても、その計画が緊急事態の発生時に有効に機能するという確証はありません。これがひとつ目のデメリットです。
想定される被害や損害に対する備えを強固にすればするほど対策コストは嵩みます。経済基盤の脆弱な中小企業にとって、機能するとは限らない施策に大きな予算を投じることは難しいというのが実情でしょう。
また、災害や感染症などに際しては、自社にとって専門外の社会的・社外的問題解決のためのノウハウや技術を要します。必要性は感じていても能力不足から踏み切れない企業も少なくありません。
このようなことがデメリットとして、各社のBCP策定の足枷になっていたようです。
これまでのBCPの概念は地震や豪雨に対する備えが中心的でした。近年、甚大な被害も増えているため国も策定を喚起する働きかけを強めてきた経緯があります。そしてさらに、新型コロナウィルス感染症が流行しました。今までの管理・対策とは大きく異なる「新たな」策定が必要とされることは皆様ご認識の通りです。今回の経験を踏まえ、自社に必要な緊急時対策をまとめておかれることをおすすめします。